各分野の特徴

feature

久留米大学産科は妊婦専用のICUを持つ、総合周産期母子医療センターです。
基礎疾患を持つ妊婦はもちろん、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの妊娠合併症、
そして救急母体搬送など、リスクの高い妊婦を多く取り扱っています。
診断、治療方針の検討としてNICU医師と毎週合同カンファランスを行っています。
産科医として重要な技術の習得として、超音波で胎児の異常を発見するテクニック、
分娩介助のテクニックや帝王切開術のテクニックなど、
指導医のサポートのもとで研修することができます。
また、産科当直を指導医とすることで、産科救急疾患を身を持って経験し、学ぶことが可能です。

周産期

1)Microvascular Doppler imaging法を用いた胎盤、子宮筋の微小血流の研究 Microvascular Doppler imaging(MDI)法は、従来のカラー・パワードプラ法では検出できない微細(1mm未満)で低流速(1cm/秒前後)の血流を可視化することのできる新しい超音波技術です。この技術を用いて下記の研究を行っています。

A.胎盤絨毛血管
正常妊娠症例における胎盤絨毛血管の生理的発達過程、胎児発育不全等の子宮胎盤血流障害症例における胎盤絨毛血流動態からみた病態解明に関する研究を行っています。現在は、先端イメ―ジング研究センターとの共同研究で胎盤組織標本から絨毛微細血管の三次元再構築を行い、高周波数プローブから得られた胎盤絨毛血管画像との比較検討を行う予定です。

B.妊娠、産褥子宮
帝切後症例を対象に産褥子宮切開部筋層の治癒過程を解明するため、MDIを用いて筋層血流評価を行っています。この研究をさらに発展させ、帝切後妊娠症例を対象として、MDIを用いた子宮筋層の血流評価から切迫子宮破裂の予測を検討すべく前向き研究を行う予定です。

C.月経周期における子宮内膜血流
正常女性を対象とし、月経周期における子宮内膜直下の微細血流の解析を行っています。

2)耐糖能異常妊婦における産後耐糖能異常の追跡調査 耐糖能異常を示した妊婦を対象に、産後の耐糖能の長期的追跡調査を行っており、現在4年目となります。

3)正常妊婦における腟内細菌叢の網羅的解析 妊婦の腟内には、lactobacillusなどの「善玉」菌が存在し腟内環境の恒常性に寄与しています。次世代シークエンサーを用いた正常妊婦における腟内細菌叢も網羅的解析、とりわけLactobacillusの解析から、その生理的意義を明らかにすることを目的に、研究を行っています。

4)周産期疫学研究 近年、生殖補助医療(ART)による妊娠症例の増加している一方、癒着胎盤、胎盤付着異常、臍帯付着異常を始めとする様々な周産期合併症もまた増加しています。久留米大学およびその関連施設との多施設共同臨床研究を行いました。これらのデータから、日本産科婦人科学会の承認を得て、国内周産期登録施設過去3年間、60万件のデータを元に、バイオ統計センターの支援の元、ART妊娠と周産期合併症との関連について解析を行っています。

婦人科腫瘍

(1) 当科の婦人科腫瘍グループの特徴 ①婦人科がんに対する新規化学療法開発の多施設共同臨床試験を主導しています。
②婦人科がんに対しての低侵襲の腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術、そして開腹の拡大手術まで幅広く施行しています。
③充実した研究環境を備えています。
④他職種の専門家による充実したカンファレンスを実施しています。

(2) 婦人科腫瘍専門医の修練について 腫瘍グループに所属すると婦人科腫瘍専門医の取得を目指して研鑽を積んでいくことになります。 広汎子宮全摘術執刀15例を含む浸潤がん手術30例の執刀が必要であり、婦人科腫瘍専門のトレーニングを行っていきます。修練開始してから5年での取得を目指します。当教室には、大学病院、聖マリア病院、九州医療センターの3つの婦人科腫瘍専門医修練施設があります。これらの施設での専門医修練研修が受けられます。これらの施設の中では既にロボット手術のトレーニングも始まっています。修練中の若手婦人科腫瘍医には、臨床面での修練に加えて、基礎研究も行い、博士号取得も同時に目指します。臨床そして基礎研究とバランスのとれた婦人科腫瘍医を育成します。

(3)内視鏡下手術について(内視鏡技術認定医の修練) 内視鏡手術は早期の社会復帰や優れた美容面などで、患者さまに大きな満足を与えることができる手術法です。また、内視鏡技術認定医は婦人科腫瘍専門医や生殖内分泌専門医と併せ持てる資格であることも大きな魅力の一つです。是非婦人科内視鏡手術に興味を持ち、内視鏡技術認定医の取得を目指して下さい。

(4)その他の認定医、専門医 婦人科腫瘍を学ぶ過程で、多く症例を経験する事により日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本臨床細胞学会細胞診専門医の取得も可能で、その取得のための指導も行っています。

生殖医学

5組に1組が不妊に悩み、13人に1人が高度生殖補助医療により産まれる時代、不妊治療のニーズは高まり、2022年には高度生殖補助医療が保険適応となったことからも分かるように、不妊治療は産婦人科の中でも重要視されています。
本学の「生殖・内分泌部門」は、1994年から体外受精-胚移植を開始しており歴史ある部門のひとつです。不妊症に対しては、ホルモン検査、子宮卵管造影や子宮鏡検査を行い多角的な診断・治療を進め、外科的治療が必要な場合(卵巣周囲癒着、卵管水腫、子宮内膜症、粘膜下筋腫など)は腹腔鏡手術や子宮鏡手術を行っています。さらに難治性の不妊症には高度生殖補助医療(体外受精・顕微授精)を積極的に実施しています。培養室にはタイムラプスインキュベーター、Piezo-ICSI、レーザーアシステッドハッチングシステムなど最新の機器を取り揃えています。不育症(習慣流産、反復流産)に対しては、抗リン脂質抗体検査や凝固系検査、内分泌検査、夫婦染色体検査などを行い、各病因にあわせてヘパリン療法やアスピリン療法、漢方療法を行っています。また、挙児希望以外でも月経異常に対する下垂体機能検査や卵巣ホルモン検査を行い原因別に適切な治療などを行っています。今後は着床前遺伝子検査の臨床試験への参加や、小児・AYA世代がん患者における妊孕性温存治療として卵子凍結や卵巣組織凍結を開始したいと考えています。
サブスペシャリティーとして「生殖医療専門医」を目指すことになります。産婦人科専門医を取得後、認定研修施設での1年間を含めた計3年間の修練プログラムにエントリーして専門医申請資格を得ることができます。認定研修施設で数多くの症例を経験する一方で、大学では合併症のため他科との併診が必要な症例も多く、バランスの取れた研修が可能です。また、研究室にはフローサイトメーターや次世代シークエンサーなど最先端の設備があり、卵胞液中のmicroRNAと卵質の関係などの研究を行っています。
本学の特徴としては、妊娠成立後の患者さんの多くが、本学での分娩を希望されます。妊娠管理は参加部門で行いますが、希望をすれば分娩に立ち会うことも帝王切開の執刀を行うことも可能です。数年間不妊治療を頑張った患者さんと分娩というゴールを共有する喜びを感じてもらえたらと思います。

女性医学

当科では先駆的に同専門外来を設け、単に更年期障害だけでなく骨粗鬆症、動脈硬化症などの疾患の予防、月経困難症や避妊相談など女性の様々な病態に対して取り組んでいます。
平成22年より日本産科婦人科学会内の新たな専門委員会として女性ヘルスケア委員会が新設されたことに伴い「ヘルスケア部門」と「生殖内分泌部門」の2つの研究小グループを含んでいます。 晩婚、少子高齢化の時代において、よりニーズが高まっている分野で、「ヘルスケア部門」では周産期、婦人科腫瘍領域はもちろん、内科、整形外科、泌尿器科、精神科、予防医学領域などともオーバーラップするため、その病態、治療に関して幅広く学ぶことができます。