不妊治療

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不妊治療について

晩婚化などの影響で妊娠・出産を希望する年齢が高くなり、不妊の検査・治療を受ける人が増えています。生殖補助医療※の技術は年々進歩を遂げており、その技術を使って実際に生まれてくる子どもの数も増えていますが、加齢とともに妊娠する力は低下し、流産などのリスクも高くなります。

健康な男女が避妊をせず性生活を続け、一定期間を過ぎても妊娠しない場合を「不妊症」と言います。この期間は年齢によって異なり、諸説あります。以前は2年が一般的でしたが、晩婚化などの社会的背景から、日本産科婦人科学会は「1年」としています。女性が妊娠できる年齢は限られているため、特に年齢が高い場合には、より早く検査と治療を始めた方がよいという考え方が広まってきました。

実際に、不妊治療を受ける人は増え、その年齢も年々上がっています。背景には結婚年齢が上がり、子どもを望む年齢が高齢化していることに加えて、不妊治療が普及して検査や治療に対するハードルが低くなったことも影響していると考えられます。

不妊の原因

不妊の原因はさまざまです。男性側の主な原因は、精子の数や運動率が少ない(造精機能障害)、勃起や射精に支障がある(性機能障害)などです。まれに、精巣内では精子が作られているのに精液中に出てこない「閉塞性無精子症」も見られます。
女性側の不妊原因には、以下のようなものがあります。

●排卵因子
卵子を順調に発育して排卵する卵巣機能に問題がある。
●卵管因子
クラミジア感染症などにより卵子が精子と出合う卵管が詰まったり、子宮内膜症などで卵管周囲に癒着が起き、卵管が狭くなったり閉塞したりする。
●子宮因子
子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどにより、子宮内膣の変化が原因で受精卵が着床しにくくなる。
●頸管因子
子宮の入り口の粘液量が少なくなると射精された精子が卵子にたどり着きにくくなる。
●免疫因子
何らかの免疫異常で精子の通過や受精を妨げることがある。
●その他
子宮内膜症、甲状腺の機能異常などの病気も不妊の原因になります。約10%の割合で原因不明のものも存在します。

女性の方が項目は多いですが、男性単独または男女両方に原因がある場合を含めて男性に何らかの原因がある可能性は48%と、原因の男女比はほぼ半々です。若いうちから何年も不妊治療に取り組んでいても、妻だけが長い間検査や治療に取り組んだ後で、夫の検査をして原因が見つかったときには、妻は年齢的に妊娠しづらくなっていたということもあります。男性の検査も先送りにせず、不妊治療は夫婦一緒に取り組むのが基本です。

不妊治療の種類

【第1段階】一般不妊治療 ●タイミング法
妊娠しやすいと言われる排卵日の2日前から排卵日までに性交のタイミングを合わせる方法。6回までにで妊娠しなければ、その後の妊娠率は停滞するため目安は6回。(年齢や卵巣機能、不妊原因により異なります)
●人工授精
採取した精液中から動きのよい精子(運動良好精子)を取り出して濃縮し、妊娠しやすいタイミングで子宮内に直接注入する方法。妊娠成立のプロセスは自然妊娠と同じ。人工授精で妊娠する確率は1回あたり約10%(『生殖医療の必修知識』日本生殖医学会より)。
タイミング法と同様に6回までに妊娠しなければ、その後の妊娠率は停滞するため目安は6回。
なお、一般不妊治療には、排卵誘発薬(内服薬、注射)で卵巣を刺激して、排卵を起こさせる薬物療法、子宮内膜症などに対する外科療法も含まれます。

【第2段階】高度生殖医療(ART:Assisted Reproductive Technology) 卵巣から卵子を取り出し(採卵)、体外で精子と受精させて数日後に受精卵を子宮に戻す(胚移植)。受精の方法は以下の2つ。
●体外受精
卵子と精子を同じ培養液の中で培養して受精させ、得られた受精卵を子宮に戻す方法。
●顕微授精
動きがよく形の正常な1個の精子を卵子の中に細い針で注入する方法で、卵細胞質内精子注入法(ICSI:Intracytoplasmic sperm injection)が一般的。受精障害や重症精子減少症、重症精子無力症など体外受精では受精が起こらない可能性が高い場合に実施する。
高度生殖医療で子どもが生まれる確率は総治療あたり平均で11.7%です。年齢によって異なり、32歳くらいまでは約20%ですが、年齢とともに下降し、40歳を過ぎると7〜8%となります(2015年ARTデータブック、日本産科婦人科学会より)。
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