Department of Obstetrics and Gynecology Kurume University School of Medicine

各分野の特徴

周産期

久留米大学産科は妊婦専用のICUを持つ、総合周産期母子医療センターです。基礎疾患を持つ妊婦はもちろん、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの妊娠合併症、そして救急母体搬送など、リスクの高い妊婦を多く取り扱っています。診断、治療方針の検討としてNICU医師と毎週合同カンファランスを行っています。産科医として重要な技術の習得として、超音波で胎児の異常を発見するテクニック、分娩介助のテクニックや帝王切開術のテクニックなど、指導医のサポートのもとで研修することができます。また、産科当直を指導医とすることで、産科救急疾患を身を持って経験し、学ぶことが可能です。

周産期班としては、周産期専門医の取得を目指します。周産期新生児学会の指定する研修施設で3年間以上の研修が必要です。研修カリキュラムは基本的内容(知識、診療技能、診療態度、医療倫理)、規定の研修症例数を経験すること、診断及び治療技能を習得すること、となっています。また学術活動に参加し、刊行論文があることも必要です。

1)耐糖能異常妊婦の内分泌学的病態の解明に関する研究
 内分泌糖尿病内科との共同で、耐糖能異常妊婦妊娠の産後のフォローアップを重点的に行い、糖尿病発症の自然歴やその病態の解明について研究を行っています。

2)Shear wave elastrographyを用いた妊娠子宮頸部熟化の定量的評価に関する研究
 組織の硬さを定量的に評価するshear wave elastography(SWE)が広く臨床応用されるようになりました。現在、頸管熟化異常(頸管無力症、早産、難産)症例に応用し、予測診断として臨床応用すべく研究を行っています。

3)早産症例における羊水細菌叢プロファイルと児の転帰との関連に関する研究
 早産においては、子宮内細菌叢の変化に惹起される胎児炎症反応(fetal inflammatory response syndrome: FIRS)が、児の予後と大きな関連があることが報告されています。近年、次世代シークエンサー(NGS)を用い、網羅的に細菌核酸塩基を決定することで、従来検出できなかった細菌を含め、細菌叢全体のプロファイルを明らかにすることができるようになりました。現在、早産症例における羊水細菌叢プロファイルと母体、羊水、胎児血の生化学的指標、児の転帰との関連を解析しています。

4)周産期疫学研究
久留米大学およびその関連施設との多施設共同臨床研究から、周産期における諸種の臨床課題の解明のための疫学研究を推進しています。一例として、ART妊娠とその妊娠転帰との関連について、日本産科婦人科学会の承認を得て、周産期登録施設過去3年間の60万件のデータをバイオ統計センターの支援を頂き、解析しています。

婦人科腫瘍

(1) 当科の婦人科腫瘍グループの特徴

①婦人科がんに対する新規化学療法開発の多施設共同臨床試験を主導してきました。
②国内外で注目されるがんペプチドワクチン療法の開発、臨床試験を行っています。
③婦人科がんに対しての低侵襲の腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術、そして開腹の拡大手術まで幅広く行なっております。
④臨床とリンクする最新の基礎研究室を備えています。

①婦人科がんに対する新規化学療法開発の他施設共同臨床試験を主導してきました。

当教室では、国内の他施設と積極的に協力体制をとり、JCOG(日本臨床腫瘍グループ), JGOG(婦人科悪性腫瘍研究機構)が執り行う多施設共同臨床試験を主導してまいりました。これらの成果として早期子宮体がんに対する妊孕性温存治療を世界に発信した成果がその代表例です。これからも婦人科腫瘍グループでは世界に発信する日本発のエビデンスの構築に積極的に協力してまいります。

② 国内外で注目されるがんペプチドワクチン療法の開発、臨床試験を行っています。

久留米大学免疫学教室と共同開発を行い、国内外で注目されるがん免疫療法の一つであるがんペプチドワクチン療法の開発、臨床試験を行ってまいりました。現在、再発婦人科がんに対するがんペプチワクチン療法を久留米大学医学部附属医療センターにてがんペプチドワクチン専門外来を開設し専門治療を行っております。

③婦人科がんに対しての低侵襲の腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術、そして開腹の拡大手術まで幅広く行なっております。

  • 卵巣がん:卵巣癌は疾患の特異性から腹腔内に多発性播種転移をきたすため、手術で腫瘍の完全切除が生命予後を左右します。そのため、初回手術や術後化学療法後の手術で腫瘍の完全切除を達成することが非常に大切です。当科では完全切除を達成するための拡大手術(骨盤腹膜切除、他臓器切除、横隔膜剥離術、傍大動脈リンパ節郭清術など)を積極的に施行しています。
  • 子宮体がん:早期症例には積極的に腹腔鏡下手術の腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術を施行しており(当科は同手術施行認定施設に承認されています)、毎年20名以上の対象の方に当該手術を施行しております。
    また、重症肥満患者に対しては、当大学形成外科と協力し、腹壁脂肪切除術+脂肪吸引術と開腹子宮悪性腫瘍手術を同時施行し、術後の整容性確保に努めています。
  • 子宮頸がん:平成28年12月より早期子宮頸がんに対する腹腔鏡下広汎子宮全摘術の先進医療実施施設認定を取得し実施しております。婦人科領域で最も高侵襲である広汎子宮全摘出術が腹腔鏡下手術という低侵襲で行える体制を構築しております。平成30年4月からは保険収載での手術へ移行する予定です。また、平成30年6月以降は最新型の手術支援ロボット “ダ・ヴィンチ Xi”を用いてのロボット補助下子宮悪性腫瘍手術を予定しております。
    開腹、腹腔鏡による広汎性子宮全摘術では、手術時の骨盤内蔵神経損傷による術後神経陰性膀胱が手術関連有害事象として問題となります。当科では、この有害事象を軽減すべく適格症例に対しては、積極的により精密な神経温存手術を施行しております。

④臨床とリンクする最新の基礎研究室を備えています。
・当教室では臨床で感じた疑問点を、すぐに基礎研究で実証する体制を構築しております。現在、教室研究室内にはReal Time PCR, フローサイトメーター、次世代シークエンサーといった基礎研究室レベルの最先端の機器を揃え充実した研究環境が完備されており、充実した研究環境が構築されています。婦人科腫瘍グループは、現在、子宮頸部胃型腺がんの網羅的遺伝子解析、子宮体癌の薬剤抵抗性遺伝子発現の検討、化学療法抵抗性の低分化型子宮体がん、卵巣明細胞腺がん中のがん幹細胞の分子生物学的解析、microRNAを用いた新規治療法開発の研究を行っております。

最新型次世代シークエンサー

充実した研究環境

(2) 婦人科腫瘍専門医の修練について

腫瘍グループに所属すると婦人科腫瘍専門医の取得を目指して研鑽を積んでいくことになります。 広汎子宮全摘術執刀15例を含む浸潤がん手術30例の執刀が必要であり、婦人科腫瘍専門のトレーニングを行っていきます。修練開始してから5年での取得を目指します。当教室には、大学病院、聖マリア病院、九州医療センターの3つの婦人科腫瘍専門医修練施設があります。これらの施設での専門医修練研修が受けられます。これらの施設の中では既にロボット手術のトレーニングも始まっています。修練中の若手婦人科腫瘍医には、臨床面での修練に加えて、基礎研究も行い、博士号取得も同時に目指します。臨床そして基礎研究とバランスのとれた婦人科腫瘍医を育成します。

(3)内視鏡下手術について(内視鏡技術認定医の修練)

近年婦人科良性疾患に対して、お腹を切らない内視鏡手術(腹腔鏡下手術・子宮鏡下手術)がどんどん普及しています。当科では年間約120例前後の内視鏡手術を行っており、特に子宮悪性腫瘍に対する症例数は年々増加しています。当科は早期子宮体がん・早期子宮頸がんに対しての腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術の施行認定施設です(保険収載、先進医療)。これらの疾患の対象となる患者さまに対して当科では積極的に同腹腔鏡下手術を施行しております。この手術は、開腹手術と比較して創部の美容性に優れ、入院期間短縮(開腹手術:術後10日目退院、腹腔鏡下手術:術後5日目退院)も可能です。当科では、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮頸部異形成に対して全腹腔鏡下子宮摘出術、卵巣腫瘍に対して腹腔鏡下卵巣腫瘍切除術、腹腔鏡下付属器摘出術、悪性腫瘍の診断目的の腹腔鏡下生検術など数々の婦人科疾患に対して積極的に腹腔鏡下手術を行っております。

 産婦人科専門医取得から3年間日本産科婦人科内視鏡学会に所属すると、内視鏡技術認定医の受験資格が得られます。論文作成、学会発表、執刀手術数などを一定数満たし、手術のビデオ審査を通ると認定医になることができます。現在教室員にも技術認定医が誕生し、産婦人科専門医取得から3年間日本産科婦人科内視鏡学会に所属すると、内視鏡技術認定医の受験資格が得られます。論文作成、学会発表、執刀手術数などを一定数満たし、手術のビデオ審査を通ると認定医になることができます。現在教室員にも技術認定医が誕生し、また関連病院が腹腔鏡技術認定医の修練施設(久留米総合病院、小倉医療センター、久留米大学病院平成30年度申請予定)となっております。患者さまのニーズが非常に高いこの低侵襲手術分野に、当教室でも情熱を燃やす若手医師が多く、今後も積極的に技術認定医を養成します。

内視鏡手術は早期の社会復帰や優れた美容面などで、患者さまに大きな満足を与えることができる手術法です。また、内視鏡技術認定医は婦人科腫瘍専門医や生殖内分泌専門医と併せ持てる資格であることも大きな魅力の一つです。是非婦人科内視鏡手術に興味を持ち、内視鏡技術認定医の取得を目指して下さい。

生殖医学

各種原因による無排卵症及び肥満やダイエットによる月経異常、小児思春期異常に対して、下垂体機能検査や卵巣ホルモン検査を行って原因別に適切な治療を行っています。
不妊症ではホルモン検査、子宮卵管造影や子宮鏡検査を行い多角的な診断、治療を進めています。また長期不妊や卵巣周囲の癒着、卵管水腫、子宮内膜症に対しては腹腔鏡手術を施行し、子宮内膜ポリープや粘膜下子宮筋腫に対しては子宮鏡手術を行っています。
さらに難治性の不妊症には体外受精・胚移植を積極的に実施しています。不育症(習慣流産、反復流産)に対しては、抗リン脂質抗体検査や凝固系検査、内分泌検査、夫婦染色体検査などを行い、各病因にあわせてヘパリン療法やアスピリン療法、漢方療法を行っています。

当グループは女性の思春期、性成熟期、更年期、老年期といった一生涯通じたヘルスケアを担当しております。各ライフステージにおける生殖内分泌や医学的諸問題を研究対象としています。

「生殖内分泌部門」では不妊症、不育症を対象として、検査、治療(人工授精、体外受精など)を行っていきます。専門医は「女性医学学会専門医」、もしくは「生殖医療専門医」のどちらか、またはその両方を目指すことになります。前者は女性医学学会会員歴3年以上、後者は、修練開始後に大学病院2年、関連認定施設1年の計3年の修練プログラムにエントリーして専門医申請資格を得ることができます。現在、同プログラムに沿って若手医師が専門医取得を目指して国内留学中です。

女性医学

日本が世界一の長寿社会となり、生命・生活の質が問われるようになった現在、更年期以降は女性の最も充実した時期の一つだと捉えられるようになっています。
また思春期以降の女性においても、それぞれのライフステージにおいて月経異常や子宮筋腫などの女性特有の病態を有しています。女性の一生を通して女性の健康を守ることが女性医学の概念であり、予防医学としての役割が重要視され、「女性ヘルスケア」は急速に国民の間に認知されつつあります。このようなことから当科では先駆的に同専門外来を設け、単に更年期障害だけでなく骨粗鬆症、動脈硬化症などの疾患の予防、月経困難症や避妊相談など女性の様々な病態に対して取り組んでいます。

平成22年より日本産科婦人科学会内の新たな専門委員会として女性ヘルスケア委員会が新設されたことに伴い「ヘルスケア部門」と「生殖内分泌部門」の2つの研究小グループを含んでいます。 晩婚、少子高齢化の時代において、よりニーズが高まっている分野で、「ヘルスケア部門」では周産期、婦人科腫瘍領域はもちろん、内科、整形外科、泌尿器科、精神科、予防医学領域などともオーバーラップするため、その病態、治療に関して幅広く学ぶことができます。